本研究で神経細胞の培養法および培養神経細胞の免疫電顕法を確立することができた。特に培養神経細胞の免疫電顕法は従来存在しなかった新しい手法であり、しかも金コロイド銀増感法を用いることにより目的とする物質の定量化が可能となった。再生神経、特に成長円錐における微量タンパク質の検出およびその動態の検討に今後も必要不可欠な手法といえる。 以上の手法を用いて再生神経、再生軸索の伸長機構の解析をおこなっさた。その結果、培養神経細胞の成長円錐におけるPKC各分子種とGAP-43との関連を検討し、PKC各分子種の局在の相違、またGAP-43のリン酸化に関与するのはPKCβまたはδの可能性が高いという新しい知見を得た。そしてPKCとの関連が注目されている神経栄養因子受容体、Trk familyの成長円錐における機能解析も行った。成長円錐にTrk A、Trk B、Trk Cの各神経栄養因子受容体が発現していることを確認し、主に成長円錐の糸状足でその機能を果たしていることが判明した。さらにはシナプス小胞膜蛋白質であるシンタキシンやSNAP-25を分解するボツリヌス毒素を培養神経細胞に作用させると、成長円錐に巨大な小胞が蓄積され神経伸長の阻害、糸状足の退縮が生じることも明かとなり、シナプス小胞膜蛋白質が神経伸長に強く関与していることを示す結果も得た。また成長円錐に発現する接着分子としてインテグリンα6の存在も確認している。以上のように本研究で新しい手法の確立および超微細構造である神経成長円錐における機能タンパク質の解析という成果を得た。
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