切断肢の保存状態を評価し、その組織が再接着可能かどうかを判定するための一つの方法として、切断肢内の血管コンプライアンスおよび血管透過性の体外循環灌流装置による測定方法を確立した。体外循環灌流装置として、同系ラットの新鮮な血液で組織灌流が行われ、さらに生理的に安定した血行動態が得られるシステムを完成させた。循環回路への血液供給源には別の同系ラットを用い、全身痲酔下に人工呼吸器にて呼吸を管理し、動静脈圧をモニターしつつ、大腿動脈と頸静脈に体外循環回路を接続する方法を用いた。この装置に切断指を連結し、切断指の動脈圧、静脈圧、重量、動静脈血の酸素含有量を経時的に計測しデーターをパーソナルコンピューターに接続記録し、血管コンプライアンス、血管透過性、組織酸素消費量を実験の進行と同時に計算した。本方法における本年度の実験過程で、切断肢及び灌流血液の温度が血管コンプライアンスや組織代謝率におよぼす影響が明らかとなり、切断肢再接着後の温度管理の重要性が示唆された。すなわち、温度を37度から25度に低下させることによる切断指への影響を、灌流血液の性状の変化と血管コンプライアンスの変化、切断指内の組織の酸素消費量の変化について比較検討した。低温にすると、循環血液の粘稠度は1.26倍に増加し、切断指の血管コンプライアンスは56%の低下を認め、この両者の和として、血管抵抗値は2.3倍に増加した。また、低温にすることにより、切断指内の組織の酸素消費量は52%に低下した(平成8年度学会発表予定)。さらに平成7年度には、対照群である新鮮切断肢の37度状態での血管コンプライアンス、血管透過性、組織代謝率の測定を終えた。
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