本研究は、in vivoにおける組織エネルギー状態の、非侵襲的モニタリング法の開発を最終目的としている。低酸素によりエネルギー供給が悪化すると、呼吸鎖が停滞し組織中にNADHが蓄積することを利用し、NADHのイメージング化によるエネルギー状態の把握を試みた。NADHは350nmの紫外線を吸収し、450nmの可視光を放射するため、手術用実体顕微鏡に、光源として350nmのフィルターを付けたキセノンランプを用い、受光部に450nmのフィルターを付けた紫外線感受性電子冷却CCDカメラを装着した。カメラの画像はPC/AT互換コンピュータに取り込み、解析を行った。観察対象にラットの中大脳動脈閉塞モデルを用い、人工呼吸下に大脳皮質のNADHイメージを観察した。その結果、虚血直後より、虚血側の大脳半球の血流低下部位に発光を確認した。 現在の問題点として、ヘモグロビンの影響があげられる。ヘモグロビンは450nmの光を吸収するため、組織中の血液量の低下のみによっても発光量が増加する可能性がある。また肝臓のように組織中の血液量が極めて多い組織ではNADHの蓄積による発光量の変化が検出できない可能性がある。これらヘモグロビンによる問題を解決するため、受光感度を上げると共に、画像データと組織中NADH量の実測値を照らし合わせ、相関関係を明らかにする必要がある。
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