平成9年度においては、前年度からの研究の続行と、平成7年度から9年度までの研究の総括を行った。現在までの実験により(1)BLPのBBNによるラット膀胱癌発癌予防効果は、BLPに完全に特異的とは言えないが同じ乳酸捍菌類の中でも、その作用発現に差異があることが判明した。これには、用いた乳酸菌の生菌率やラット腸内での増殖率にも左右される可能性があり、平成9年度にも再度concanavalinAを用いたスクリーニング試験を行った。結果は多少相違は見られたが、BLPが最も強い活性を持つことが示唆された。(2)BLPの喫煙者における尿中変異原性因子の抑制効果について検討した。結果は個人差が大きかったが、ある被験者においては、タバコ喫煙後の尿中変異原性因子の量がBLPの内服により明らかに低下した。喫煙による尿中変異原性因子の産生機構については明らかにされてはいないが、喫煙と膀胱発癌の相関性が疫学的に証明されており、BLPの効果発現の機構の解明は急を要するものと考えられた。(3)臨床データの解析により、表在性膀胱癌の再発の機構には大別して二種存在すること、しかも、そのうちのひとつは、いわゆるsecond primary cancerであることが示唆された。これには、initiated cellが膀胱癌患者の膀胱上皮に、長期間存在し何らかのpromoterにより癌化する過程が存在すると考えられた。今回の実験によりBLPが、発癌の予防にも変異原性因子の産生抑制に関与する可能性が示唆されたことより、膀胱癌の再発予防にもBLPがsecond primary cancerを主に抑制する点において深く寄与する可能性が考えられた。
|