表在性膀胱癌の経尿道的腫瘍切除(TUR-Bt)後の膀胱腔内再発の予防に乳酸桿菌製剤の一種であるlactobacillus Casei Preparation(BLP)の経口投与が有効であることが臨床試験で示唆されている。本研究ではBLPが癌の予防あるいは発癌の抑制に有効であるかを検討した。BLPは、ほとんど無害であり、その癌に対する効果の発現構造が解明されれば、単に膀胱癌のみならず、他の多くの癌にも共通にbio-chemoprevention剤として応用できる可能性がある。Concanavalin A凝集反応を用いた発癌ピロモーター抑制剤のスクリーニング試験では、BBNによるラット膀胱癌発癌抑制に対して、種類の乳酸菌のうち約半数が有効であることが示唆された。この事は乳酸菌の生菌率や腸内での増殖率もあるいは、他の生物学的特性の差異によるものと考えられる。実際の発癌実験においても、菌種による差異が示唆されている。この抑制作用発現の原因を究明することが今後の研究の発展に不可欠と考えられた。また、タバコ喫煙者に尿中変異原性因子が高濃度に検出されることが以前より報告されているが、本研究では、ある被験者においては、その発現が抑制されることが判明した。喫煙と膀胱発癌の高い相関性とその予防を考える上で、重要な結果と考えられた。これまでの研究者らの臨床的検討では膀胱癌のTUR-Bt後の再発要因として、真の意味での再発に加えsecond primary cancerとしての再発が存在することが示唆されている.これにはinitiated cellが膀胱癌患者の膀胱上皮に長期間存在しつづけ、何らかのpromoter作用により癌化する過程が想定される。今回の一連の実験によりBLPが発癌の抑制や変異原性因子の生産抑制に関与することが示されたことにより、臨床においても上記のsecond primary cancerによる再生の抑制にBLPが有効である可能性が考えられた。
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