研究概要 |
性ホルモン投与における中枢神経系の形態の変化を主にゴナドトロピン分泌を調節するLH-RHニューロンのシナプス可塑性の変化から検討することを目的として、性機能の推移や性差に伴う視床下部、特に視索前野と弓状核領域のLH-RHニューロンおよびグリア数とその分布状況、軸索樹状突起シナプス数、軸索細胞体シナプス数やその変化などについて電子顕微鏡を用いて超微形態学的研究をおこなった。今回の補助金により、電顕材料を計画的に作成するとともに、免疫組織学的検索をおこなうことができた。各性周期のラットおよび卵巣摘除後、さらにエストロゲン投与後に潅流固定を実施し、脳組織を摘出した。脳の検索部位についてLH-RH免疫組織化学的検討を実施した。透過型電子顕微鏡を用いてLH-RH免疫組織陽性細胞とLH-RHニューロンについての超微形態学的変化の検討をおこなった。 双極性のLH-RH免疫組織陽性細胞はラット視索前野を含め視床下部に比較的広く分布していたが、視索前野および弓状核のLH-RHニューロンはドパミンニューロンやGABAニューロンなどともお互いにシナプス結合していることが判明し、この部位は生殖内分泌学的には極めて重要な中枢部位と考えられた。性周期の各時間では、弓状核および視索前野における軸索細胞体シナプス数には変動がみられ、PROSTRUSの時期が最も多く、次いでDIESTRUS,METESTRUS,ESTRUSの順であった。しかし、性周期に伴う変化は軸索樹状突起シナプスではみられなかった。一方、卵巣摘出後のラットでは軸索細胞体シナプス数は減少し、特にEstradiol投与後では平均28.8%の減少がみられたが、この減少は経時的に回復する傾向が認められた。このように、エストロゲンはラット視索前野および弓状核のLH-RH免疫陽性軸索細胞体シナプス数の変化に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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