研究概要 |
[目的]着床現象を解明したり、臨床応用可能な新しい胚移植法となりうるかどうかの基礎実験を行う。[研究成果]温度感受性ポリマーであるポリNイソプロピルアクリルアミドと1型コラーゲンで作製した人工細胞外マトリックスを利用し、性ホルモンに感受性があり人工子宮内膜として応用可能な、子宮内膜の3次元再構築体(スフェロイド)の作成方法を確立した。しかも、この3次元再構築体の内部で子宮内膜間質細胞は性ホルモン(プロゲステロン)に反応してcellsortingを起こして凝集し、さらに、分泌蛋白であるプロラクチンを産生し、細胞骨格の変化を来してデスミンを長期にわたって発現し、脱落膜化していることが明らかとなった。このように子宮内膜間質細胞を含むスフェロイドが性ホルモンに反応したことで、3次元構造を有する人工子宮内膜を作製する端緒を開いた。同様な方法を用いて絨毛癌由来細胞株であるBeWoを用いてスフェロイドの作製を試み、3次元再構築体を作製した。この多細胞凝集塊はサイトケラチン陽性、ビメンチン陰性で、培養液中にHCGを分泌していた。さらに、子宮内膜細胞由来のスフェロイドとBeWo細胞由来のスフェロイドの共培養を行い両者は容易に接着する事が可能で、着床現象をin vitroで3次元的に再現できる培養系であることが明らかとなった。以上の研究結果より、子宮内膜の3次元培養系には1.細胞の形態,2.細胞密度,3.細胞間相互作用,4.細胞一細胞外基質相互作用が重要であることが明らかとなったが、今回の系も全てを満足する培養系とはいえない。臨床応用を目指したより生理的条件に近い3次元培養系を確立するには、これらの条件を考慮して細胞および細胞外基質を再構築した培養系の確立が必要と思われる。
|