研究概要 |
骨とは異なり改造現象のないと云われているヒト象牙質中でのTIMP-1、TIMP-2と間質コラゲナーゼの局在を免疫組織化学的に検索したところ、TIMP-1,TIMP-2は、既に、ウシの象牙質で報告したように、いずれも管周象牙質に局在していることが明らかとなった。さらに、間質コラゲナーゼに関して、プロ型、活性型の両方と反応する抗体およびプロ型のみと反応する抗体を用いて検索したところ、いずれもTIMPと同じように管周象牙質に局在していると云う結果が得られた。この結果を考察すると、管周象牙質にプロ型の間質コラゲナーゼが存在することが明らかになった。プロ型酵素自体は分解活性を持たないが、何らかのメカニズムで活性化されれば、コラーゲンの分解に関与することになる。一つの可能性として、生理的には骨のリモデリングと同じように管周象牙質でリモデリングが行われていることが考えられる。さらに、病的には、齲蝕が象牙質に及んだ場合、このプロ型コラゲナーゼが、細菌の分泌するプロテアーゼにより活性化され、脱灰された象牙質のコラーゲン分解に関与する可能性が考えられる。今回の研究結果では、活性型コラゲナーゼの存在は、明らかでないが、象牙質の形成過程や可能性の一つとして前述した管周象牙質のリモデリングに使われたものがTIMPと複合体を形成して不活性化されて存在していることが考えられる。この場合でも、複合体を形成しているTIMPが、前述した細菌性プロテアーゼによって分解されるようなことがあると、活性型酵素がフリーになってコラーゲンの分解に加わる可能性がある。いずれにしても象牙質の生理ならびに病態を考える上での新しい知見である。
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