研究概要 |
スピーチエイド装着下での鼻腔内陽圧負荷療法による鼻咽腔閉鎖機能賦活化の可能性を検討するために、平成7年度は、鼻咽腔閉鎖機能の主たる担体である口蓋帆挙筋活動が、スピーチエイドの装着によってどのように変化するかを検討した。その結果、口蓋帆挙筋活動は、blowing時には撤去時よりも小さくなり、撤去時の筋活動との間に予備能が形成されることを明らかにした(日口蓋誌、21:28-34,1996)。さらに、発音時においても、スピーチエイド装着時には、撤去時と比較して低い筋活動で目的を達成することが明らかとなり、第20回日本口蓋裂学会総会(東京)ならびに第40回日本音声言語医学会総会(鹿児島)において発表した。これらのことは、破裂子音/pu/をサンプルとしてスピーチエイド装着時に持続的鼻腔内陽圧を負荷することによって口蓋帆挙筋活動を撤去時の高さまで上昇させ得る可能性を得た。 以上の結果に基づき、3人のPLP (Palatal Lift Prosthesis)装着中の口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例を対象に、既に開発した持続的鼻腔内陽圧負荷装置(日口蓋誌、19(3):1994)によって鼻腔内陽圧を負荷した結果、発音時口蓋帆挙筋活動は、陽圧を負荷していない際よりも高くなることが示された。しかしながら、鼻腔内圧の上昇と筋活動は必ずしも単純な直線相関関係ではなく、被験者によって最も筋活動が高くなる鼻腔内圧の大きさは様々であった。以上のことより、PLP装着者においてはCPAP療法が有効である可能性が示された。平成8年度は、さらにBulb-PLP装着症例を対象にした同様研究を行い、CPAP療法施行における試案を作成する予定である。
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