研究概要 |
本年度は,1)歯肉由来微小血管内皮細胞の培養液中に含まれる筋弛緩因子(NO)を定量すること,および2)同細胞に機械的刺激を加えて弛緩因子の産生がどのように変化するのか検討することを目的とした。なお,ヒト臍帯動静脈由来の血管内皮細胞にも同様の刺激を与え比較した。 ヒト歯肉を細切,コラ-ゲナーゼ処理後,typeIコラーゲンでコートした96ウェルプレートに播種した。5%炭酸ガス存在下,37℃で培養し,コンフルエントに達した細胞のうち,単層敷石状配列を呈し,かつ他細胞の混入が認められないウェルの細胞を継代培養した。単層敷石状配列に加え,von Willebrand factorの存在,Dil-Ac-LDLの取り込み,血管様網目構造の形成が確認された細胞を血管内皮細胞と同定した。弛緩因子の定量には,試料とDAN(2,3-diaminonaphthalene)試薬を反応させた後,410nmの励起波長で励起し,365nmで蛍光を測定する方法で行った。細胞に機械的刺激を与える際には,細胞伸縮装置(フレキサ-セル)を用いた。 その結果,機械的刺激を加えない場合には,歯肉血管内皮細胞,臍帯動静脈内皮細胞いづれの培養液中にも,弛緩因子は検出されなかった。機械的刺激(6時間/日の間歇刺激または連続刺激,24%伸展)を加えた場合,臍帯動静脈内皮細胞では刺激開始3日目には弛緩因子が検出されたが,5日目には弛緩因子はわずかに産生されるか,もしくは産生されなくなった。これに対して,歯肉血管内皮細胞では,実験期間中を通じて,弛緩因子は検出されなかった。現在のところ歯肉の血管内皮細胞は4代まで継代可能である。しかし,4代まで継代して得られる細胞数では,弛緩因子を検出するまでには充分量でないことが考えられる。細胞数を増やすか,もしくはより感度の高い検出方法を確立する必要性が示唆された。
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