研究概要 |
顎関節症(TMD)には咀嚼筋の緊張亢進による疲労や活動のアンバランスが関わるとされている.しかしTMDには咀嚼筋障害をもつものともたないものがある.これらの病態は筋活動との関わりを明らかにするために,TMD保有者を咀嚼筋障害のある者とない者に分け,生活パターンと日常的な咀嚼筋活動の特徴を比較した. [対象と方法]本学歯学部の女子学生と女子職員31名にTMD診査を行い,咀嚼筋障害のあるTMD保有者(M群),咀嚼筋障害のないTMD保有者(NM群),TMDの既往もない健常者(N群)の3群各4名を選んだ.左右咬筋中央部に表面電極を貼付し,山田らの開発した携帯型筋電計を用いて平日24時間の筋活動を記録した. [結果と考察] 1.生活パターンの特徴 M群では,NM群とN群より食事時間が短く,食事回数は少なかった. 2.咀嚼筋活動の特徴 1)MVCとガム咀嚼時の咬筋の平均活動電位 M群では、NM群に比べてMVC-Lに対するGUM-Lの比率が大きく,ガム咀嚼時の筋活動レベルが高かった. 2)咬筋のスパイク数 咬筋のレベル2以上のスパイク数には,3群間で差がなかった. 3)生活行動区分における時間当たりのスパイク数とレベル別の割合 M群では,食事中の時間当たりのスパイク数がN群より多く,しかも非常に強い筋活動の割合が多かった. NM群では、勉強と仕事中およびその他の時間における時間当たりのスパイク数がM群より多かったが,レベル別の割合はN群と差がなかった.なお,NM群の被験者Gでは睡眠中の時間当たりのスパイク数が多かった. 3.以上から,TMD保有者のうち,咀嚼筋障害のある者では食事の時間と回数が少なく、食事中における咬筋の時間当たりのスパイク数が多くて活動レベルが高い特徴があり,咀嚼筋障害のない者では勉強,仕事,その他の時間における時間当たりのスパイク数が多い特徴があることが示唆された.
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