研究概要 |
1)(S)-4-イソプロピルオキサゾリジノン(1)をフッ素ガスでフッ素化したところ,目的とするN-F化合物2が得られた.しかしながら,1を幾つかの臭素化条件に付したものの,対応する臭素化物を得るには至らなかった.なお,1の塩素化に関しては現在検討中である. 2)(S)-α-フェネチルアミンのN-トシル体3,N-メシル体4,およびN-トリフリル体5を合成し,これらのN-H体をフッ化過クロリルによるフッ素化に付したところ,前二者からのみ,低収率ながら対応するN-F体6および7が得られた. 3)既に合成した,二種のアルキル基が3位に導入された2,3-ジヒオロベンゾ[1,2-d]イソチアゾール1,1-ジオキシド類(N-H体)の光学分割を検討した.ラセミ体を10-(+)-塩化カンファースルホニルと縮合してジアステレオマ-とし,二種の異性体を分離後それぞれを加水分解する方法で,N-H体の光学分割を達成した.アルキル基がメチルとシクロヘキシルの組み合わせの場合は,得られた(R)配置のN-H体8を,フッ素ガスを用いる方法で対応するN-F体9へと誘導することに成功した.その他のハロゲン化体の合成に関しては,現在検討中である. 4)上記の方法でその合成に成功した2,6,7,および9のN-F化合物を用いて,立体選択的フッ素化反応を試みた.2-メチル-1-テトラロン(10),2-ベンジル-1-テトラロン(11),およびエチル2-オキソシクロペンタンカルボキシレート(12)を塩基で処理後,上記のN-F化合物を作用させたところ,2を用いた反応では10のフッ素化体13を与えなかったものの,11および12に対応するフッ素化体14および15が低収率ながら得られた.しかし,それらの不斉収率は低いものであった.6および7を用いたフッ素化反応の場合も同様な結果が得られた.比較的良好なものとしては,11に対してKHMDS/THF/-40°C〜-20°Cの条件下で6を作用された場合に,化学収率53%,不斉収率48%で14を得た.これらとは対照的に,9を用いたフッ素化の場合には全般的に良好な結果を与えることが分かった.最も良い結果としては,10に大してLDA/THF/-50°C〜0°Cの条件下で9を作用させた場合に,化学収率81%,不斉収率80%で14を得ることに成功した. 5)上記した化合物8,8のカンファースルホニル体,及び化合物9の,3種類のスルホンアミド体をX線解析に付して窒素原子の周りの立体構造を調べ,その結果を基に,不斉誘導が起きる機構を吟味した.
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