研究概要 |
1) (S)-バリンおよび(S)-フェニルグリシンから光学活性4-置換2-オキサゾリジノンおよび2-チアゾリジノンを得た.これらのN-フッ素化を試みたところ,前者の場合のみ光学活性のN-F体を得た.このフッ素化体を,NaH処理のエチル2-オキソシクロペンタンカルボキシレオートに反応させたところ,目的のC-フッ素化体が生成したものの,その不斉収率は約10%と低いものであった. 2)サッカリンに2種のアルキル金属を作用させて,異なるアルキル基が3位に導入された2,3-ジヒドロベンゾ[1, 2-d]イソチアゾール1,1-ジオキシド類を合成し,これらにフッ素化を施して対応するN-F体を得た.次にラセミのN-H体を10-(+)-塩化カンファースルホニルと縮合してジアステレオマ-とし,二種の異性体を分離後それぞれを加水分解する方法で,N-H体の光学分割を達成した.アルキル基がメチルとシクロヘキシルの組み合わせの場合は,得られた(R)配置のN-H体1を,フッ素ガスを用いる方法で対応するN-F体2へと誘導することに成功した.その他のハロゲン化体の合成に関しては,現在検討中である. 3) (S)-α-フェネチルアミンのN-トシル体,N-メシル体,およびN-トリフリル体を合成し,これらのN-H体をフッ化過クロリルによるフッ素化に付したところ,前二者からのみ,低収率ながら対応するN-F体が得られた.しかしながら,これらのN-F体を用いる,活性メチレン化合物に対するC-フッ素化反応の化学収率ならびに不斉収率は,余り高いものではなかった. 4)上記のN-F化合物2を用いて立体選択的フッ素化反応を試みた.2-メチル-1-テトラロン(3), 2-ベンジル-1-テトラロン(4),およびエチル2-オキソシクロペンタンカルボキシレート(5)を塩基で処理した後,2を作用させたところ,全般的に良好な結果を与えることが分かった.得られた最も良い結果としては,3に対してLDA/THF/-50℃〜0℃の条件下で2を作用させた場合に,化学収率81%,不斉収率80%で目的とするC-フッ素化体を得ることに成功した. 5)上記した化合物1, 1のカンファースルホニル体,および化合物2の,3種類のスルホンアミド体をX線解析に付して窒素原子の周りの立体構造を調べ,その結果を基に,不斉誘導が起きる機構を吟味した.
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