蛍光性クマリン環を有するL-α-アミノ酸の合成とその光学異性体分離への応用

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07807196
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 北海道薬科大学
• 研究代表者: 長澤 一男 北海道薬科大学, 薬学部, 助教授 (50128831)
• 研究分担者: 岡崎 律子 北海道薬科大学, 薬学部, 助手 ; 山下 麻未 北海道薬科大学, 薬学部, 助手 (10182495)
• キーワード: 蛍光 / クマリン / L-α-アミノ酸 / 光学異性体識別試薬

研究概要

1.非ステロイド系抗炎症剤・(S)-(+)-ナプロキセンの酸ハライドは、その構造的特徴から、塩基の存在下では容易にハロゲン化水素を脱離してケテンを生成、しかる後アルコールが付加すれは、ラセミ体のエステルが生成する。我々はこの禁忌に敢えて挑戦、500℃の減圧加熱により活性化した塩基性アルミナ/第三級ブチルアルコール系を利用して合成化学的に応用価値の高い、第三級ブチルエステルをラセミ化することなしに良好な化学収率で合成することに成功した。本反応系を更に発展させ、酸成分に立体障害を有する場合に於いても、より反応活性な酸ブロミド利用により難なくその障害をのり越え、既存の「化学の常識」を大きく塗り変えた。
2.前項の研究結果が果してL-α-アミノ酸に応用可能か否か検討を加えた。当然のことながら、アミノ基の保護基を各種検討したところ、ラセミ化が進行せず、かつ高収率で目的とする第三級アルコールエステルが生成する酸ブロミド化に対しては、Fmoc基(9-フルオレニルメチルアキシカルボニル基)とTFA基(トリフルオロアセチル基)が適当であることが判明した。ここに得られた(アミノ酸の)酸ブロミドに対して、前項の反応条件を適用、各種アミノ酸の第三級アルコール(特にt-ブチル基)エステルを合成した。続いて、塩基性条件下、既存の方法によりアミノ基の脱保護を行い、良好な化学収率でラセミ化することなしに各種のアミノ酸エステルの合成に成功した。
3.続いて、ラセミ化に特に抵抗すると言われているL-プロリン第三級ブチルエステルに焦点を当て、市販の4-ヒドロキシクマリンより得られる4-クロロクマリンと縮合させ、更にトリフルオロ酢酸処理により、光学純度100%の目的とする標類化合物を良好な化学収率で合成することに成功、その光学異性体識別試薬としての実用性も実証した。今後更に類縁体の合成を検討の予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kazuo NAGASAWA: "Activated Basic Alumina Promotes a Mild, clean and High-Yield Racemization-Free Synthesis of t-Butyl Esters form Chiral ---" Chemistry Letters. 209-212 (1994)
• [文献書誌] Kazuo NAGASAWA: "N-Coumarinyl-L-proline, A Novel Chiral Derivatizing Agent for H HMR Determination of Enantiomeric Purities of Alcohols ---" Chem. Pharm. Bull.,. 43. 344-346 (1995)
• [文献書誌] Kazuo NAGASAWA: "New Crystalline N-(Coumarin-4-yl)-L-pyroglutamic Acid. Firset Synthesis and Application to ^1H NMR Optical Purity ---" J. Heterocyclic Chem.,. 33. 0000 (1996)
• [文献書誌] Kazuo NAGASAWA: "A Noticeable Comment on Rademization of Mandelic Acid Derivatives During Carbonyldiimidaszole-Mediated Esterification" Tetrahedron Asymmetry. 7. 0000 (1996)
• [文献書誌] Kazuo NAGASAWA: "A New Enantiopurity ^1H NMR Inspection Agent for Chiral Aldehydes, Ketones, and Carboxylic Acids。 N^1-Coumarino ---" Tetrahedron Asymmetry. 7. 0000 (1996)