研究概要 |
本研究は、ペプチド性医薬品の消化管吸収を促進するための新しいマルチプルユニット製剤を開発することを目的としており、A.リポソーム B.生分解性ポリマーナノスフェア-の2種類の基本デバイスについて現在までに以下の事項を明らかにしてきた。 A.リポソーム (1)キトサン類でコーティングしたリポソームは腸管粘膜付着性を示し、インスリンを封入してラットに経口投与したところ12時間以上に渡る持続的な血糖値低下作用を示した(Pharm. Research, 13, 896-901 (1996)) (2)ラット小腸粘膜ホモジネート存在下手のインスリンの分解は、キトサンの共存、インスリンのリポソームへの封入のいずれによっても抑制された。しかし、インスリン溶液をキトサン溶液と共にラットに経口投与しても血糖値の低下は認められず、in vivoではキトサンのインスリン分解抑制効果はほとんど認められないことが判明した(Drug Delivery System,投稿中)。 (3)種々の高分子の粘膜付着性評価を行うための簡便なin vitro評価法として、あらたに懸濁ムチン粒子のゼータ-電位を測定する手法を開発した(日本薬学会117年会にて発表予定)。 B.生分解性ポリマーナノスフェア- (1)ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)ナノスフェアへのペプチド性薬物カルシトニン、TRHの封入性は、油相を連続相としている油中法に比べて高く、また薬物保持能力にも優れていることが判明した。ラットにこのデバイスを経口投与したところ、血中カルシウム濃度は数時間に渡って低下し、カルシトニンの腸管吸収が示唆された(Europ. J. Pharm. Biopharm.投稿中)。 (2)粘膜付着性機能の付与を目的として、PLGAナノスフェア表面をキトサン、ポリアクリル酸等の種々の高分子でコーティングすることを試みた結果、キトサンによりコーティングが可能であり、粘膜付着性機能を付与できた(日本薬学会117年会にて発表予定)。
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