研究概要 |
血栓症発症の初期段階に血小板が重要な役割を果たし、血栓症の予防・治療面からも血小板凝集反応と細胞接着分子の細胞膜表面への発現機構の解明が待ち望まれている。脂質メディエーターであるPAFにより惹起され、凝集した血小板はトロンビンなどの刺激により凝集惹起された血小板とは異なり、PAFアンタゴニスト(WEB2086)により脱凝集され、PAFにより惹起され、凝集反応に関わる細胞接着分子の膜表面の発現が可逆的な機構に基づくことを初めて明らかにした。ウサギ血小板で免疫したマウス脾臓細胞を用い、常法に従い抗体産生細胞株(MY2-73)を確立し、PAFはじめ様々な刺激による血小板凝集反応阻止作用を持つ単クローン抗体(,κ鎖,IgG2_aタイプ)を得ることが出来た。またCr^<51>を取り込ませた血小板のフィブリノーゲン、コラーゲン分子への接着反応を、MY2-73抗体は容量依存的に阻止し、これまでに得られている抗血小板抗体は血小板が活性化されるとより反応性が上昇し、血小板細胞膜上のGMP140, GPII/GPIIIをエピトープとしているが、得られた抗体は血小板の活性化により反応性が低下し、新規な細胞接着因子を認識する抗体である可能性が考えられた。HITrap NHS活性化カラムに腹水より精製した単クローン抗体を結合させたアフィニティークロマトグラフィーにより、CHAPSで可溶化したウサギ血小板膜蛋白質を分画し、細胞接着因子を濃縮ご、ラクトペルオキシダーゼを用いてヨード化標識した。MY2-73抗体、Biotin-F (ab′)_2ウサギ抗マウスIGG (H+L)、アビジンアガロースを用いた免疫沈降反応でI^<125>標識細胞接着因子をSDS-PAGEで分離した結果、120kDa, 110kDaに放射活性を認めた。本抗体が認識する血小板膜蛋白質の蛋白化学的な解析は大変微量であった為に計画年度中に明らかにすることが出来なかったが、抗体を多量に得て、アフィニティ担体を作製して一次構造を解明する予定である。
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