研究概要 |
抗体が持つ特異的結合能を巧みに応用した微量測定系は,イムノアッセイと称され医学・生物学の領域に広く浸透し,今日のバイオ技術を支える重要な手段となっている。しかしながら,従来の発色酵素や放射性同位体を用いた検出系では,フェムトモル(1×10^<-15>モル)濃度を検出限界とし,その濃度以下の物質の定量や検出を行うことは不可能であった。本研究では,近年,著しい勢いで発展して来たPCR法と言われる分子生物学的新技術をイムノアッセイの検出系に導入し,抗原抗体反応が示す特異性とPCR法が持つ優れた感度を併せ持った超高感度測定系(イムノPCR法)の構築を試みた。測定のモデル物質としてC反応性タンパク質を用いて検討を行った結果,以下のことが明らかとなった。 1.Ca^<2+>依存的にホスホリルコリンに結合する性質を利用して,測定対象(C反応性タンパク質)をプレートに固相化した。ブロッキング後,一次抗体,ビオチン化二次抗体,アビジン,ならびにテンプレートであるビオチン化Template DNA断片を順に反応させた。最後に,特異的プライマー(SP6及びT7プロモータープライマー)を用いてPCR反応を行ったところ,固相化したC反応性タンパク質の濃度に依存してPCR産物(497bp)の特異的な増大が認められた。 2.PCR産物をエチジウムブロマイド染色後,個々の蛍光強度を見積もることによって,標準曲線を得ることができた。 3.PCR産物量は,反応サイクルや温度,アニーリング時間などのパラメータに依存して変化した。 4.ペルオキシダーゼや耐熱性ホスファターゼを発色酵素として用いた従来のイムノアッセイの検出限界が約80ng/mlであったのに対して,本測定系(検出限界:2.5ng/ml)はその数30倍高い感度を示した。
|