研究概要 |
当初の計画通り,アデノウイルスベクター(AdV)の各種細胞への感染効率とそれに影響する因子の解析,さらに,サイトカインレセプターや各種シグナル伝達分子の遺伝子発現ベクターによる細胞形質の改変などin vitro生物学的活性の検討を行なってきた。 (1)各種サイトカイン発現アデノウイルスベクターの作製とin vitro感染実験. 各種のサイトカイン(hGM-CSF, mGM-CSF, mIL-2, mIL-4, mIFN-γなど)発現ベクターを作製し,COS細胞や白血病細胞株などにおけるサイトカイン発現を検討した。ELISAによる検討では発現は感染第3-4日目をピークに一過性パターンを示し,発現量はMOI依存的であった。現在,マウスへのin vivo注射によるサイトカイン血中濃度の時間経過と生物学的作用の検討を開始している。 (2)各種サイトカインレセプター発現ベクターの作製と遺伝子発現効率の検討 ヒトGM-CSFレセプターαおよびβ鎖,β鎖の変異分子,IL-3レセプターα鎖,c-kit, c-fmsなどの各種レセプター発現AdVを作製中である。すでに完成したGM-CSFレセプター分子発現ベクターはJurkat, COS, NIH3T3細胞などに高効率かつ高レベルに外来性レセプター分子を発現した。また,MOIや時間経過と発現量との関係の検討では,lacZやサイトカン分子発現ベクターの場合の発現と同じく,一過性にMOI依存的発現を示した。一方,Tリンパ球などビトロネクチンレセプター低発現細胞への感染効率を検討したが,各種の刺激条件下でも遺伝子発現細胞比率は数%にしか上昇しなかった。 (3)各種サイトカインレセプター発現ベクターの作製とシグナル伝達の検討 現在,ヒトGM-CAFレセプターαおよびβ鎖およびその変異遺伝子発現ベクターを用いてNIH3T3細胞におけるサイトカイン応答性の獲得(c-fos-luciferase assay)を検討している。また,大量に293細胞を培養し,超遠心法により精製ウイルスを得る条件を検討した。今後は,in vivoおよびprimary細胞への感染を行ない,細胞形質改変に向けての実験を行なう予定である。
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