研究課題
基盤研究(C)
昨年度に気管切開中の患者から採取した喀痰を再度検鏡し分析を行ったところ、線毛円柱上皮細胞数に大きなばらつきがあった。確認できた細胞は、線毛が脱落して単独で存在しているものがほとんどで、集塊で存在するものや線毛があっても単独で存在しているものがわずかに認められた。この結果からは、喀痰中の細胞が強制的に剥奪されたものか否かの鑑別ができないと考え、ラットを使って偽的に剥奪された細胞がどのような状態で存在し、気管支にどのようなダメ-ジを与えるかを確認するため基礎実験を行った。実験は麻酔をかけたラットの気管支を露出、切開して吸引チューブを挿入し、吸引厚400mmHgで吸引を行い、その吸引物の細胞の状態を位相差顕微鏡で確認した。その結果、多数の赤血球の存在と集塊となった細胞の存在が確認できた。更に1μmの切片を作成し検鏡した結果、赤血球に囲まれた細胞が集塊で存在することが確認できたが、この赤血球が吸引によるものか、解剖の時流れ込んだものかは明らかでない。またラットの気管支を切開し、肉眼的に観察したところ出血の跡が確認でき、切片にして検鏡した結果、肉眼的に出血の跡が見られた部分の気管支粘膜が広範囲に剥がれていることが確認された。以上ラットの実験より、人為的に剥奪した細胞は集塊で存在すること、剥離後の気管支の出血と気管支粘膜に損傷が起こることが明らかになった。よって、患者を対象に400mmHgで吸引した場合、局所に高い圧がかかり気管支粘膜の損傷の可能性が否定できない。従って昨年まで実施していた染色による細胞の検鏡では、自然剥離した細胞と吸引により剥奪された細胞を鑑別することが困難であると思われる。今後は、ラットの実験で用いた方法で対象者からの喀痰を検鏡することができるか否かの実験を行い、対象者の炎症症状などを合わせて研究を進めていくことが必要と考える。
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