研究概要 |
アルミニウムイオンはトランスフェリンやクエン酸と結合して細胞膜を通過し,一部が血液関門を経て脳に蓄積され,アルツハイマー性痴呆症の原因の一つになると言われている. そこで食品や食品包装材料などから溶出したアルミニウムを経口摂取した場合の体内吸収の可能性を調べるため,アルミニウムイオン(Al^<3+>)と他の食品成分との結合能について検討した. 試料は,大豆から抽出した食物繊維,市販の食物繊維,その他の多糖類,ポリフェノールおよび有機酸類を用いた.水溶性の試料に一定量のアルミニウムイオンを加え37℃,1時間保持した後,残留アルミニウムイオン量をエリオクロムシアニンR吸光光度法で,不溶性の試料については,同様の処理をした後ろ過し,ろ液中のイオン量をクロムアズロールS吸光光度法で測定した. その結果,大豆抽出の水溶性食物繊維は無水物1gあたり21mg,熱水抽出ペクチン質は5mgのアルミニウムイオンを結合した.市販のコーンファイバーには水溶性,不溶性とも結合能はなかった.大豆抽出の水溶性ヘミセルロースは0.4mg,キシランが0.5mgのアルミニウムを結合した.ポリフェノールは茶葉に多いエピガロカテキンガレートが1gあたり1.6mg,タンニン酸が1.1mg,コーヒーに含まれるクロロゲン酸が0.7mgのアルミニウムを結合した.また有機酸では,クエン酸の結合力が特に大きく,約44mg,シュウ酸が30mgであった. 以上のことから経口摂取されたアルミニウムの一部は食物繊維やポリフェノール類とともに体外に排出されると考えられたが,クエン酸が多く存在した場合は,むしろ吸収の可能性は高くなると推察された.
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