21世紀に向け、予防医学的観点から、成人病の予防とともに骨粗鬆症予防が、もはや必要不可欠な課題となってきた。このような現況の中、骨粗鬆症およびその予防に対する関心が高まり、行政においても骨量検診の計画がなされ、骨粗鬆症患者のスクリーニングが始まりつつある。治療以前の問題として、個人のQuality of Lifeの向上をも含めた予防の重要性が認識され始めており、ひとり一人が実際の日常生活において、いかに骨粗鬆症予防を図るような生活の仕方をするかが、最も求められる今日的テーマである。そこで、骨量減少が顕著である女性に対象を絞り、骨代謝回転の速い海綿骨を多く含む腰椎および踵骨の骨密度測定を実施し、さらに、骨密度に対する日常活動量の影響を詳細に検討するために、その指標として、メモリー式歩数計によるデータの解析、体力の評価として握力計を用いた握力測定を行い、骨量減少に対する生活習慣(活動量などの生活の仕方)の改善効果および握力の影響を検討した。その結果、腰椎および踵骨いずれにおいても骨密度は、加齢とともに減少を示したが、腰椎では、有意差は認められず、一方、踵骨においては年齢との間に有意な負の相関が認められた。加齢および閉経による骨量減少は踵骨骨密度の方が顕著であり、より反映されやすいことが示された。また、腰椎と踵骨骨密度との間に有意な正の相関が示された。さらに、実際の運動習慣のある、つまり活動量が多いと推察される対象者の方が運動習慣のない、活動量が少ないと推察される対象者に比し、歩数計による活動量は有意な高値を示したものの腰椎および踵骨骨密度との間には有意な相関は認められなかった。また、体力の指標の一つとして捉えた握力は加齢とともに有意な低下が示され、50歳代および60代に限ると腰椎骨密度の間に有意な正の相関が認められた。一方、握力と踵骨骨密度との間には明らかな相関関係は示されなかった。また、70歳代のみではいずれの骨密度においても有意差は示されなかった。今後は、一人一人に対して、それぞれの活動量と体力および骨量減少の関連を歩数計の連続記録によって詳細に検討し、個々に対応した具体的な骨粗鬆症予防対策を図る必要があると思われる。さらなる追究を行い、閉経後女性に対する健康管理の指標へと結びつけたい。
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