長期間のベッドレストのような不活動後には糖代謝能が低下し、糖代謝能が減退する。宇宙旅行も1つの不活動状態と考えられ、実際に長期間宇宙飛行を体験した旧ソ連の宇宙飛行士の地球帰還時の血糖値が高値を示す場合があり、それは無重力状態により抗重力筋の不活動により骨格筋の糖代謝能が低下したためであると考えられている。そこで本研究では運動時間が短くても、糖代謝能低下を予防するために最適なトレーニング法を開発することを目的として、ラットに低強度・長時間運動と高強度・短時間運動を行わせた後の骨格筋の糖取り込み速度を測定・比較検討した。低強度・長時間運動は体重の2%の重りをつけて2時間の水泳運動とした。従来の研究により、この運動により糖の取り込み速度が安静度の5倍程度まで上昇し、この運動後の安静時糖取り込み速度の増加は48時間程度、持続することが知られている。一方、高強度・短時間運動は、体重の18%の重りをつけ、運動10秒・休息20秒のセットを8回行う水泳運動であった。本研究の結果より、この、従来、研究の対象とされなかった高強度・短時間運動により、糖取り込み速度が、前述の低強度・長時間運動後の取り込み速度よりも高い値を示すことが明らかになった。さらにこのような運動を用いたトレーニングを行ったところ、インスリン感受性が低強度・長時間運動によるトレーニング後と同様に高まることが明らかになった。したがって、宇宙飛行のような短時間当たりの単価の高い生活条件では、低強度の運動に加えて高強度・短時間激運動も加えることが有効であることが示唆された。また摂取した糖の処理能力は筋肉量と筋の単位重量当たりの糖取り込み速度の関数であるが、宇宙飛行では無重力状態により抗重力筋を中心に萎縮がおこり蛋白量が減少する。したがって、それを防止するためにも、筋蛋白合成刺激の強い高強度の運動を行うことが必要であろう。
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