昨年度と同じ装置同じ材料を用い、断層のずれの速度と大きさを変えて、Run1(2cm/2hour、total14cm)、Run2(2cm/0.5hour、total14cm)、Run3(4cm/1hour、total32cm)の3回の実験を行った。どのRunにおいても横方向の流路変形は明らかであるのに、流路に沿う縦断形にははっきりした不連続が現れず、流路が断層によるずれの分だけ伸長しただけのようであった。水路の横方向に投影した縦断形には、下流側の河床低下による断層位置での不連続が明らかであった。実験水路は、屈曲部に緩傾斜区間を作るはずの横ずれ変形に対して、下流側の侵食を加速させて流路に沿う縦断形を維持しようとしたようである。断層のずれ速度が比較的小さいRun1では、横方向のずれに対して側方侵食によって流路が斜めになかったが、Run2と3では、流路の平面形が断層に沿ってほぼ直角に変形し、投影縦断形には断層を境に下流側の河床低下が明らかでに示されていた。ずれ速度の大きかったRun3では、断層による変形を受けた部分の縦断形(流路に沿う)に上に凸の形状が残った。また、昨秋米国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層を横切る小河川について流路に沿う縦断形を計測することができたが、Wallace Creek のようにかなり大きな河川では、比較的急勾配である屈曲区間の上流側が若干緩傾斜となっており、Run3の場合と類似していた。 実際の断層運動には縦ずれ成分もあり、縦ずれ横ずれの大きさと河床勾配のかねあいによって、変形された区間の縦断勾配がより急になることも緩くなることも考えられる。つまり、もとの河床勾配によって、同じ程度の断層運動であっても変形区間がより急勾配になることも緩勾配になることもありうるわけで、それぞれの場合で河川の反応の仕方も変わってくるはずである。サンアンドレアス断層を横切る小河川は、緩勾配ではあるが実験と同様断層運動がほとんど横ずれのみの場合と考えることができ、日本での計測例も河床勾配と断層運動による変形状態の違いによって縦断形の不連続を説明することが可能のようである。
|