1. 横ずれ断層によって変形を受けた河川の縦断形には、屈曲部付近に何らかの不連続が見られる。例えば、根尾谷、三浦半島および伊豆半島で計測した緩勾配(0.05程度以下)河川では屈曲区間の縦断形が階段状で全体として急に、伊豆半島の急勾配(0.1以上)河川では屈曲区間が緩くなる傾向が見られた。サン・アンドレアス断層を横切るWallace CreekおよびHanline Creek(勾配0.05以下)では、断層に沿う部分が比較的急勾配に、前者南側の小ガリーでは緩勾配となっていた。 2. 流路の中央区間を横にずらせる実験では、明らかな横方向の変形に対して、流路に沿う縦断形には明確な不連続が現れなかった。実験流路は、横方向の変形に対する反応・調節をあまり行わず、下流側の侵食を加速させて流路に沿う縦断形を維持したようである。水流の観察から、流路の変形区間より下流で乱流の程度が増し、侵食力が増加したと考えた。 3. 実際の断層運動には縦ずれ成分もあり、河床勾配とのかねあいによって、変形区間は全体としてより急勾配にも緩勾配にもなる。横ずれによる屈曲部から下流側が下刻傾向となるため、河床勾配より緩くなる場合、下刻が容易ならば下流側の下刻(および上流側の堆積)によって流路全体の勾配が保たれ(水路実験)、下刻が進まなければ緩勾配の部分が残る(伊豆半島の例およびWallace Creek南側の小ガリー)。変形により急勾配となる場合は、縦ずれ変位部分からの堆積物によって屈曲部に堆積が起こって谷幅が拡大し、その後の下刻によって屈曲部に段丘が形成されたり、縦断形に階段状形態が残ったりする(根尾谷、三浦半島の例)。断層による変位が河床勾配と同程度の場合も、縦ずれ横ずれによって階段状の変形ができるわけで、河川の状況によっては屈曲部が急勾配区間にもなる(Wallace CreekおよびHanline Creek)。
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