平成4年度までの研究で、図形学習ソフトを利用して、図形の証明問題を行った場合、今まで証明問題には手を付けなかった生徒が証明の根拠を探そうとする様子が見られた。また、インタビューの結果、「測定値」が生徒の納得の強い根拠となることも見い出された。 コンピュータ環境では、多くの例を作り、連続して変化する値から、不変なもの、変化しないものを容易につかむことができる。そこで、今まで時間がかかりすぎてできなかった「図形の性質をまず、見つけ、その一般性を示す」様な指導が容易になってきた。一般的な妥当性を示すための証明の動機づけについて、Schmann & Villiers(1993)も指摘しているが、このような環境で、「測定値では、いつでもいえるという保証はない」とか、「コンピュータはいつでも正しいとはいえない」だから論理的な証明が必要だと、生徒に疑いを持たせ、その疑いをはらすための道具として証明を指導するのは、困難になっている。Villiersは生徒は妥当性を示すより、むしろ説明をしようとする証明の考えに満足するといっている。実際、授業で、証明の導入に「説明」する証明を取り入れるには、生徒の間で、どの様な説明がなされるかを知る必要がある。 そこで、本年度は、2人1組の短大生、8組について中学校レベルの図形の問題を4問与え、実験を行った。1問について、1時間を使った。彼女達は、中学校以来図形の学習はしておらず、事前調査ではほとんどの定理は忘れていた。図形の問題をしめし、「その中にある図形の性質や定理を見つけ、証明しなさい。」という課題を与え、「なぜそうなるかをお互いに説明してください。」といって、どの様に友達同士説明するかをビデオと観察により記録し、分析した。その結果、図形を動かし、測定値を使いながら、見つけた性質について、会話の中に論理的な説明が行われることが分かった。例えば、測定値を見て「この長さ同じになるんだ!」「だって、この点は中点だから、辺が2対1になり、・・・」など活発な会話が行われ、その中で、論理的な説明を展開しようとしている。
|