[目的]海外・帰国子女に対する教育的要請に鑑み、これまでに科学研究費の補助を受けて実施した一連の研究によって得られた知見をふまえて、次のような調査を実施した。(1)日本人学校の児童・生徒の家庭生活環境に対する意識や実態を明らかにし、異文化体験が及ぼす影響について考察を深めた。(2)在外教育施設(補習授業校)における保護者の家庭生活観や家庭科教育観について特色を明らかにした。(3)アメリカおよび日本の中等学校で使用されている家庭科教科書の国際理解教育に関する記述について比較・分析をした。 [方法](1)1995年9月〜1996年1月にかけて、調査協力の得られた約45校の日本人学校に調査を実施し、約3300名の児童・生徒の調査票を回収し、統計的処理をした。(2)1995年6月〜10月にかけて、約20校の補習授業校に調査を依頼した。 (3)日本の中等家庭科教科書7冊、アメリカの中等家庭科教科書5冊を分析対象とした。 [結果](1)結果の一部を例示すると、日常生活の悩みや程度については、アジア地域の児童・生徒の方が衛生面や行動の自由さや治安に不満をもつものが多くみられた。また、現地の住生活については、ヨーロッパ地域の児童・生徒の方が肯定的にとらえ、環境に配慮しながら生活している傾向がみられた。このように、地域により質問項目に対する意識の差がみられ、日本人学校の児童・生徒の生活状況や生活環境を熟知した上で家庭科の指導をすることが必要であることを確信した。 (2)調査票の整理をし、統計的手法を検討している。結果については割愛する。 (3)日本の家庭科教科書は、異文化に関する記述が少なく、国際化に対応した教育を目指すためには異文化を導入した教育内容の再検討が必要であるという知見を得た。
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