(1)脳波・脈波等からの問題解決的思考における認知活動の心的構えの検討 平成8年度までの研究の成果から、問題解決における被験者固有の認知活動に対する心的構え(こだわり)を脳波β1波帯域や脈波が反映していると考えることができた。これを今年度の分析において、映像情報を対象としての問題解決の各場面において、前年度までに指摘してきている脳波β1波帯域のパワースペクトルの後頭葉活性型が有意に高い出現を示し、また、その各場面において、特徴的な前頭葉活性型の出現もみられた。これらについての検討が今後求められる。その解決のためには、パワースペクトルの変動の量的な分析に対して、実際の思考に伴うイメージや思考の内容の検討が必要不可欠となる。そのために次に調査を行った。 (2)構成主義的観点からの児童の自然認識の実態調査 大阪府下の6小学校の第3学年から第6学年の児童約800人を対象として、理科の学習内容A区分の「生物とその環境」における「生命誕生」「生長と水」「生長と日光」等の10項目に対しての生活知や学校知についてアンケート調査した。その結果から、児童の「生物とその環境」に対する自然認識における多様な素朴概念を明らかにすることが出来た。これらから、新しい学力としての「思考・判断」に関する評価の枠組に対して有益な知見を得ることが出来た。 (3)新しい学力観に対する新しい評価方法の開発の検討 上記2で得られた知見に対して、実際の教師がそれらを活用できるかどうかは、教師の持つ評価観によって左右される事は言うまでもない。そこで、教師の評価観についての実態調査を行った。岡山市内の市立中学校33校の理科担当教師を対象とし、評価の目的、問題点、評価方法の工夫内容、情意面の評価方法などについてアンケート調査を行い、23校(72名)の教師からの回答を得た。新しい学力観に基づく新しい評価の必要性は強く意識しているものの、その具体的な方法の困難さに問題を抱えていることが指摘できた。
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