1.初級段階の日本語教育では、教科書が会話形式であるため、一まとまりの「文章」を読んで理解するという読解の技能の開発が従来あまり行われていなかった。大学・大学院に進学する学生に対する教育においては、早期から読解の能力を養成する必要があると思われ、90時間終了程度の学習者からでも使用できる読解教材を作成した。 2.初級段階では、語彙・文型の制約があるため、抽象性の高い話題を取り上げられないため、地図やグラフ、写真、ビデオ映像等視覚情報が文章理解の助けとなる地理を読解教材の話題とした。 3.教材の作成にあたっては、まず外国の地理教科書を収集して翻訳し、学習者が日本に関してどのような知識をもっているのかを分析した。収集・翻訳した教科書は、インドネシア、中国、マレーシア、フィリピン、モロッコのものである。これらの内容分析の結果、日本の教科書や日本人の認識と一致しない点があること、高度経済成長の理由に関心があることがわかった。この点を踏まえて教材の項目を選定した。 4.初級段階において読解教育があまり行われていない理由の一つに、授業時間の不足が挙げられる。そこで、学習者が自習できるよう、マルチメディアの機能を生かし、音声や語彙の外国語訳等を入れたCAI教材を作成した。 5.本研究で作成した教材の構成は以下の通りである。 印刷教材+CAI 本文(漢字仮名交じり文ルビ付き/ルビなし)+音声 カラーの図表・写真・グラフ 辞書(漢字の読み方 音声 やさしい日本語による解説 外国語訳) 読解チェック問題
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