研究概要 |
社会問題や、広く人間に関わる諸問題をその数理的構造をとらえたモデルで表現し、コンピュータ科学として定式化することにより社会情報学の基盤の一つとすること目標として、研究成果の公的発表と改良および新主題の開発を併せて行った。「景気循環の動力学的モデル」は動的な経済現象を扱う理論を探求するための予備考察として始めたが、弱いカオスを示す領域を含むことから複雑系研究会や物理学会年会などで話題となり随所で発表を行った。細胞分化モデルとの関連など今後に持ち越す課題は数多くあるが、これまでの結果と今後の展望を含めてETD2000(IEEE,1995)や物性研究などに発表した。「意見集約のイジング型モデル」の研究はわれわれの考察した意見集約モデルが準総和型CA(セル・オートマトン)に対応することに気づいたことからCAそのものの研究に発展し、北御門(研究生)の協力を得て日本応用数理学会年会、複雑系研究会、IEEE主催の進化プログラミング関連の国際会議(ICEC'96)などで発表し、その一部は論文誌Robotics and Autonomous Systemsに掲載された。社会のモデルの叩き台として、また「人工生命」にヒントを得た「人工社会」のベースとして今後も継続して追求してゆく予定である。新しいテーマとしては次の2つを追加した。「人間乱数」は、人間に乱数列を発生させるという心理学の問題を脳の独創的な思考のしくみを探求する情報科学の問題として再考察しようとするもので、第一段階での実験結果を使った統計学的モデルによる解析をIizuka'96で共同研究者の伊庭が発表した後、その反省と国内外の文献を通しての知見などから新しい方向での実験を単独で試み、論文をソフトコンピューティングの論文誌(国際誌)に投稿中である。「源氏物語の計量的研究」では執筆順序に対する自説を単語の出現頻度から検証し、1996年11月の第1回日本社会情報学会において講演発表し、論文を日本社会情報学会の論文誌第1号に投稿中である。以上のような主題を模索する中でソフトコンピューティングの研究者達との情報交換ができ研究の方向が定まってきた。
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