本研究では、テュ-タ型と環境型を融合した知的教育システムの対象世界モデルについて検討を行った。本研究では、環境型教育システムとテュ-タ型教育システムの関係を総括し、両システムの接点となるべき対象世界モデルについて検討を進めた。環境型システムとテュ-タ型システムには、学習者に対して、前者が実空間に近いイメージ的世界で対象領域の振る舞いを捉えさせるのに対し、後者では記号化、命題化して知識を捉えさせるという違いはあるが、共に、学習者が世界のどのような側面に着目して現象を把握するべきかという、対象世界を見渡す視点が問題となる。そこで、高校化学を題材として、視点の問題についての検討を行った。提案した視点変換機能をベースとして、いずれのタイプの教育システムにおいても、学習者が着目すべきポイントがクリア-に提示されうる対象世界モデルを構築することが可能となる。また、両タイプのシステムの統合のためには、学習者が対象世界を支配する法則をどのように理解しているかをモデル化した学習者モデルも不可欠である。しかし、習者モデルについてのこれまでの研究は、テュ-タ型システムにおける学習者モデルを主として対象とされており、環境型システムにおいて、学習者モデルをどのように構築するかについてはあまり検討されていなかった。本研究では、環境型システムの中で学習者モデルを構築する手法を提案した。同時に、抽象的対象を取り扱う例として、プログラミングの学習について検討を行った。ここでは、学習者が書いたプログラムが、プログラムが処理する対象世界の上でもつ働きを提示して学習者を支援するツールの構築を行った。今後、プログラミング教育における学習環境と、学習者モデルの構築などを検討して、融合型教育システムへと進展させてゆく必要がある。
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