本年度の研究においては、先ず簡易型脳波計測器の性能キャリブレーションを行い、センサーからの出力信号をコンピュータに取り込むことにより開始した。この結果毎秒120サンプルで、0〜50μVの脳波信号を8ビットデジタル信号としてコンピュータに入力し、またデータファイルとして保存できるようになった。更に、データはリアルタイムに変換処理後、ディスプレイ上に表示され、各種解析に供する。実際の計測は晴眼者(健常者)数名について実施し、今年度は、安静開眼時及び授業(2パターン)を受ける学生の脳波を計測した。この実験の目的は、一般的授業形態とコンピュータを使用したCIA授業時の理解度をも併せて計ろうというものである。これらのデータは現在解析中であるが、授業時の集中を乱す割り込みノイズ(物音、他の人間の動作)を関知した場合に、2〜5Hz、40μVのθ波が観察された。センサーの張り付け部位が前頭部であるため眼球移動による電位変化を捕捉し易いことも原因と考えられるが、逆にコミュニケーション上の1つの意志表示手段としての利用の可能性があると思われる。授業時における理解・疑問といった思考過程の状態を示す特徴的因子は、視覚障害者のコンピュータ操作時の反応検出に応用できる可能性があり、さらに今後の多くのデータ収集と解析で取り組む予定である。また、最近の脳波研究の1手法としての事象関連電位を検出するためのプログラムも開発中であり、次年度より実計測に取り組む。 脳波の計測・解析と平行して、音による入力誘導のプロトタイプを開発した。しかしながらモノラル音では方向認識に不具合を感じるため、ステレオ出力にするためのハードウェアを準備し、改良し、脳波利用を補間する形で、ユーザーインターフェースの構築をめざす。
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