今年度は、実際に簡易型脳波計測装置を使って、各種刺激に対する脳波の変化をどの程度捕捉できるか確認を含めた実験計測を実施した。1つは前年度より継続の実験で晴眼者(健常者)数名について授業(2パターン)を受ける学生の脳波を計測した。この実験の目的は、一般的授業形態とコンピュータを使用したCAI授業時の理解度をも併せて計ろうというものである。計測した脳波データの解析の結果、ある事柄を初めて学習する被験者の理解度はβ波帯域の脳波のパワー占有率にほぼ比例するという結果が得られた。このことは、暗算や緊張によりα波が抑制されてβ波が増すというこれまでの脳波研究に於ける一般的知見とも一致しており、本簡易型脳波計測装置がインターフェースとして実用できる可能性がある事を示している。授業時における理解・疑問といった思考過程の状態を示す特徴的因子は、視覚障害者のコンピュータ操作時の反応検出に応用できるし、さらに今後の多くのデータ収集と解析で取り組む予定である。2つめは、ディスプレーに表示される英文字及び英単語文字列に対する認識に対する反応即ち事象関連電位P300の抽出と、提示されたアルファベットごとの脳波波形の差異を検出できるか実験を試みた。被験者は同じく健常な学生数名について行ったが、先ず文字ごとの反応波形の特徴については、同一被験者に関してはある程度の類似パターンを見いだすことができたが、全被験者についての一般性は見られなかった。また事象関連電位の抽出に対しては、スプラインウェーブレット変換による時間-周波数領域での解析を行った。文字認識に関しては、国際10/20法での電極配置Fp1〜Fp2間の単極導出では、明確な脳波変化を捉える事は困難であり、耳朶との双極導出ができるように改良を加えて計測を行っている。
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