前年度に引き続き、ディスプレーに表示される英文字及び英単語文字列に対する認識に対する反応即ち事象関連電位P300の抽出と、提示されたアルファベットごとの脳波波形の差異検出実験を行った。脳波センサーは耳朶との双極導出ができるように改良を加えて計測した。データ解析の結果、同一被験者に関してはある程度の類似パターンを見いだすことができたが、全被験者についての一般性は見られなかった。また事象関連電位の抽出に対しては、スプラインウェーブレット変換による時間-周波数領域での解析を行ったが時間的な変化にも一定のパターンを検出するには至っていない。そこで、文字認識よりも、行為中の要求意志が強く現れることに着目し、被験者がコンピュータゲームをプレイしている状態での脳波計測を行った。これは、一般的にレースゲームとした分類されるゲームソフトウエアを用いて、約2分間プレイさせ、その間のコース変化をム-ビ-ファイルに、また脳波は前頭中央部の変化を記録するものである。レースゲームは操作が単純でコース変化に対して左右へのコントロールしようとする意志が脳波にも現れるであろうことを狙ったものである。これまでに被験者16名のデータを収集している。データ分析はFFTによる周波数解析まで終えているが、その結果、文字認識での脳波変化に比較して個人差が大きく、特に13〜20Hzのβ波帯域にその差が大きいことが確認された。顕著な変動が脳波に現れやすい被験者と現れにくい被験者とに分類できるが、これまでの類似ゲームに対する慣れやジョイスティックの操作習熟度といった項目も含め分析する必要がある。今後、全体計測数を50件とし、ゲームでのコース変化に対応させた脳波の変動を同期させて切り出し、種々の解析を行う。
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