本年度は最終年度であり、前年度までの知見である合意形成に必要な『社会的公正』がどのように達成されるかという課題に対して、ゲーム理論的な理論分析と学習理論的モデルを通して、実際の例の分析を試みた。 前者の分析は、地域問題解決には関与主体に対する平等な負担を課すことが必要であるが、これを平等論で押しつけるのではなく、あるゲームのプロセスの結果(合意形成)として結果的に平等的配分に落ち着くということを証明したものである(農業経済研究報告30号)。ここでの合意形成の視点は、結果に対する合意ではなく意思決定ルール(ゲームのルール)に対する合意であり、各主体は自由な選好を持ちうる。しかし結果に関しては自己責任が存在する。意思決定ルールは各人に責任を問えない不平等を是正するように構築する必要がある(日本行動計量学会第25回大会抄録集) 後者の分析は、前年度構築した意思決定主体相互の『誤認』が存在する学習ゲーム分析枠組みを通して、日豪を巻き込んだマルチファンクションポリス(MFP)構想の経緯分析を行なった。この内容は世界からの民間投資・人材を呼び込むことによる国際未来都市構想である。ここでは、フィージビリティスタディ、素案づくり、豪州での大議論を経て計画が縮小する過程を学習ゲームとして記述した。結果として、MFP構想自体のコンセプトとプロジェクトのフレームワークの過度の複雑さ、公衆との信頼関係の確立が計画の失敗の主因とみられる。
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