地域問題の解決は大局的問題と異なり、地域住民による解決策への合意が最大の必要条件である。本研究では合意形成モデルの構築と時系列的なシミュレーションモデルの構築を通して、問題解決過程の評価枠組みを提供することにある。 初年度の研究で、価値意識が多様な社会では合意形成に『公正』の視点が重要なカギとなることが明らかになり、資源配分もしくは負担配分に関する配分的公正を合意形成モデルに取入れることになった。具体的には、自己責任モデルそして平等主義モデルをそれぞれ各自の責任部分と不随意的部分に分ける形で配分的公正論を論じた。これと並行して、社会での意思決定プロセスを学習過程とみなし、信念合理生をベースにした理論とは異なる拡張学習の理論をもとに『誤認』解消過程をハイパーゲーム上にモデル化した。 配分的公正モデルの分析では、地域問題解決には関与主体に対する平等な負担を課すことが必要であるが、これを平等論で押しつけるのではなく、あるゲームのプロセスの結果(合意形成)として結果的に平等的配分に落ち着くということを証明し、合意形成の視点は、結果に対する合意ではなく意思決定ルール(ゲームのルール)に対する合意であり、各主体は自由な選好を持ちうる。しかし結果に関しては自己責任が存在する。意思決定ルールは各人に責任を問えない不平等を是正するように構築する必要がある。 時系列モデルの分析では具体例として、日豪を巻き込んだマルチファンクションポリス(MFP)構想の経緯分析を行ない、フィージビリティスタディ・素案づくり・豪州での大議論を経て計画が縮小する過程を学習ゲームとして記述した。結果として、MFP構想自体のコンセプトとプロジェクトのフレームワークの過度の複雑さ、公衆との信頼関係の確立が計画の失敗の主因とみられる。
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