研究概要 |
現状では,美術館や博物館で行われている耐震対策として,展示作品の鑑賞上の美観を損ねず,しかも強烈な地震動に対して十分な耐震性能が期待できる工夫や装置は乏しい. そこで本研究では、展開式耐震展示台と仮称する高性能耐震展示台を独自に設計・試作し,振動実験及び数値解析により性能を確認した.本展示台は,免震装置のように作品に入力する地震動を低減するのではなく,地震時に作品を拘束して転倒や滑動を柔軟に抑制する方法を採用している.作品の破壊強度の検討は行っていないため,作品によっては展開した包囲枠との接触により破損する恐れが皆無とは言えないが,本年度に検討した限りでは多種多様な花瓶や壺,ガラス工芸品などに対応可能である. 振動実験および数値シミュレーションの結果からみると,本展示台は強烈な入力地震動に対しても十分な耐震性能をもっている.また,平常時に作品鑑賞を妨害しない利点をもっている.さらに展開機構の再収納は容易で,しかも安価なことから,実用性も高いと考えられる. なお,本展示台の主たる機能は美術工芸品に対する耐震保護機能であるが,感震器によって包囲枠を展開し作品を拘束する機能は盗難防止用の安全装置としても利用できることを確認している.
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