立体磁場計測にもとづく、知的学習機能を含むインテリジェントな非破壊評価法の確率をめざして、以下の手順で研究を実施した。第1段階においては、材料欠陥形状をパラメータ表現し、磁場解析の数学モデルを記述し、形状推定のための逆解析手法の数学的検証をおこなった。励磁コイルに流す強制電流と、それによって検査材料に発生する渦電流による反作用磁場との関係を、電流ベクトルポテンシャルを用いた微分・積分方程式で記述した。材料欠陥の形状はBスプライン関数によってパラメータ表現をおこない、微分・積分方程式を拘束条件にもつ最適化問題として、欠陥形状を推定する問題を定式化した。第2段階においては、コンピュテ-ショナル・インテリジェンスの技法を用いて、第1段階で数学的に定式化した手法をもとに、形状推定のための計算アルゴリズムを作成した。階層構造型ニューラルネットを用いた逆誤差伝播法を用いて、材料の欠陥が存在する検査領域の決定をおこなう計算アルゴリズムを構築した。また、材料欠陥の精密な幾何学情報を得ることを目的として、第1段階で考察した数学モデルをもとに、写像法によるパラメータ推定アルゴリズムを考案した。第3段階においては、エンジニアリング・ワークステーションにより、計算実験で得られた模擬データを使って、提案したアルゴリズムの有効性を検証した。以上の結果より、現在は軽水炉型原子炉の蒸気発生器の2次冷却系の細管に発生する微小欠陥の同定問題への適用可能性をめざした研究を展開している。このためには、磁場計測の方法、欠陥情報の特定に関して、より実際的な数学モデルの構築、および、実システムへの適用を考慮した計算アルゴリズムの開発を検討している。
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