本研究においては、先端計測技術による磁場計測データを用いて、原子炉内の蒸気発生器細管に存在する微傷欠陥の幾何学的情報を取得するためのソフトウエア技法の基礎研究を実施した。提案したアルゴリズムは計算科学の一分野である逆問題解析手法をもちいて、定量的な非破壊評価をめざしているところにその特徴がある。本研究は以下の手順で実施された。まず第1段階においては、材料欠陥の幾何学的形状モデルの分類および磁場解析システムの数学モデルを構築、形状推定のための数学的基盤を確立した。第2段階においては逆解析の計算技法を用いて、第1段階の手法を実データに適用するための方策を検討し、形状推定の計算アルゴリズムの開発をおこなった。第3段階では、シミュレーションデータによる計算実験を実施、計算手法の実際問題への適用可能性を検討し、最後の第4段階においては、前段階までに有効性を検証した評価法を実データに適用し、その実際問題への適用可能性を確かめた。以上の研究経過を経て下記に示す成果が得られた。 (1)正則化手法を用いた渦電流逆解析手法を用いて、導体表面に存在する欠陥のプロファイルを、外部測定磁場から推定する計算アルゴリズムを提案し、その有効性を計算実験により検証した。 パラメータ推定を用いて、原子力プラントにおける蒸気発生器の二次冷却系細管に発生する欠陥形状の定量評価に関する計算技法を開発、材料に発生する非貫通き裂欠陥の長さや深さ方向の形状を逆解析技術を用いて推定する方法を提案し、その有効性を実データにより確認した。 (3)遺伝的アルゴリズムを用いて、強磁性体材料の多孔性欠陥の領域を電磁場データより逆推定する問題について考察し、計算実験によりその有効性を検討した。
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