平成7年度(初年度)では、まず実験装置を製作し、比較のため過去に報告されているポリイミド平膜やセルロースアセテート平膜を用いて透過実験をおこなった。結果は従来の結果とよく一致し、製作した実験装置が十分信頼できるものである事を確認した。さらにアルミナやその他の基材に、パラジウムの薄い膜を無電解メッキで被覆した新しい試料を製作し、水素吸蔵と脱離の繰り返し実験をおこなった。50℃で無電解メッキしたものが、800℃までの加熱でも変質せず、常温で酸素の無い窒素あるいはアルゴン雰囲気中の水素を、表面のパラジウムが選択的に吸蔵することが明らかになった。しかし、酸素を含む雰囲気では、水素と酸素が反応して水蒸気となり、十分な透過性能が期待できない事がわかった。この点を改良すべく、アルカリ処理、酸処理、フッ素処理等の表面処理を現在鋭意おこなっている。実験と平行して、ガス分離膜モジュールにおける十字流、並流、向流、完全混合流の各モデルをたてて計算し、向流が分離に最も有効な流れであること、トリチウム-水蒸気-窒素の3成分系では、分離膜の入り口付近で水蒸気の優先的透過が生じ、トリチウムの透過を抑制し、その結果、多成分系に特有の最適カット条件が生じることがわかった。 本研究は、萌芽的研究であり、初年度の発表論文は無いが、原子力研究所トリチウム実験室が前に発表したポリイミド製ガス分離膜モジュールの結果を著者の開発した解析式に従い整理し、ガス分離膜モジュールのモデル計算結果とあわせて平成7年度原子力学会で口頭発表した。さらに、外国雑誌のFusion Energyに現在までの結果を投稿している段階である。
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