当該研究遂行のため、実験装置を製作するとともに、数値計算によって緊急トリチウム浄化システム(ADS)におけるガス分離膜法の有効性を明らかにした。研究を通して以下の知見を得た。 (1)ADSにおけるガス分離膜モジュールで、十字流、並流、向流、完全混合流のシミュレーション計算をおこない、向流が分離に最も有効な流れであること、トリチウム-水蒸気-窒素の三成分系において、分離膜の入口部分で水蒸気の優先的な透過が生じ、トリチウムの透過を抑制し、三成分系特有の最適カット条件が存在することが分かった。 (2)ポリイミド平膜とセルロースアセテート平膜を用いて水素と水蒸気の透過実験をし、過去の結果とよく一致することが分かった (3)パラジウム薄膜の透過性を見るために、Zr_2Fe金属粒子に無電解パラジウムメッキし、いろいろな温度における水素、酸素、窒素との反応性を調べた。その結果、無電解パラジウムメッキしたものは800゚Cまで安定であった。酵素のない雰囲気ガスにおいては、Pdは良好な水素透過性能を示したが、酸素がある雰囲気では、水素と反応し水を形成することがわかり、水素透過に悪影響を及ぼすことが分かった。 (4)ガス分離膜を透過した後の水蒸気を冷却管内に吹き込み、凝結除去する方法を開発し、臨界過飽和条件以内で良好な除去性能が得られた。 以上、分離膜の透過を基本にしたADSシステム全体の実験と解析をおこない、当初予定した成果を上げることができた。
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