研究課題/領域番号 |
07808057
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
志村 洋子 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (60134326)
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研究分担者 |
藤井 弘義 東洋大学, 工学部, 講師 (10058141)
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キーワード | 幼稚園 / 保育所 / 保育室内 / 音響特性 / 教師・保育者 / 環境音暴露量 / 保育活動内容 / 快適音環境 |
研究概要 |
平成8年度は、作業仮説1)「保育所・幼稚園における実際の保育室内の音響特性はどの様なものであるか」、ならびに、作業仮説2)「乳幼児のコミュニケーションを支える音場としての室内が活動状況の変化によって音圧レベル等がどの様に変動するのか」について、前年度の継続として対象園をさらに増やして測定した。実際の保育室内の音響環境の検討と、作業仮説3)「乳幼児を保育する側である保育者等の環境音・作業騒音の暴露量はどの様なものであるか」の測定結果とをあわせて検討した。 今年度は幼稚園・保育所、計5カ所の保育室合計10室の音響の測定実験を行い、各々の音響特性を解析した。また、通常の保育が行われている室内の録画・録音を行い、それらの分析から保育活動の変化による音響特性の変容を解析共通性・相違点を明らかにした。その際、前年度と同様、保育者に環境音測定暴露計を装着してもらい計測を行った。 その結果、全施設のL50値の範囲は55dB〜85dBで、幼稚園では65dB〜85dB、保育所では60dB〜75dBで、やや個別の差異はあるものの、幼稚園がほぼ5dB程度高いレベルが観測された。LMAX値は75dB〜100dBとかなり大きなレベルであった。保母・教師に装着してもらった騒音暴露量からのL50の数値は、60dB〜90dBの範囲に集中しており、その範囲は幼稚園は70dB〜85dB、保育所では65dB〜85dBでほとんど差がなかったものの、保育所が幼稚園に比べやや下回った。乳児の活動内容との関連で見ると、主な音源は乳児の泣き声や幼児の叫び声が重複したり、堅い素材の遊具の床への衝突音など遊びの活動に伴って発生した音であった。保育者に装着した騒音暴露量からのL50値と室内騒音レベル(L50)を比較すると、両施設とも5dB程度上回った結果であった。この暴露量としての60dB〜90dBの値は「工場内の音」にも匹敵する音量とも言え、保母・教師は保育時間中に常にこうした音に晒されていることが示された。 以上のことは保育者だけでなく乳幼児にとっても、保育室内が快適な音環境とは言いがたい状況と考えられ、作業仮説4)に関連して室内の反響音の吸収など建築上の何らかの対策が望まれる。実験を行った幼稚園・保育所の中には、保育室内の反響音や環境音に関しての悩みを持つ園が多く、解決の糸口を見いだそうとしている動きもみられはじめている。
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