現代社会はストレス社会と言われているように、ストレスが誘因となる疾患があるストレス症に苦しんでいる人も多く、このため生体のストレス応答に関する研究は今日様々な分野で活発に行われている。本研究ではマクロで工学的な視点からストレス応答にアプローチする第1歩として、パルス応答性の応用により脳へのエネルギー輸送と内部での消費を簡便迅速に測定する手法を開発し、さらにその手法のストレスの客観的評価に対する有効性を明らかにすることを最終目的とした。 1.in vivoパルス応答実験手法の確立 ラットの脳にin vivoで頸動脈からR1トレーサー物質をパルス導入し頸静脈での応答(濃度変化)を測定する実験手法が確立された。トレーサー物質としては、血液脳関門を容易に透過して脳内で部分的に代謝されるグルコース、血液脳関門を透過しないナトリウムイオンなどを用いた。 2.簡易型数理モデルの構築 脳におけるグルコースの移動と代謝を極めて簡便化した簡易型の数理モデルを用いて定量的に記述した。これまでの医学や生理学の分野で蓄積されている知見と比較して妥当なパラメータが簡便・迅速に得られた。 3.脳灌流in vivoパルス応答実験手法の確立 脳灌流in vivoパルス応答実験によって、血液脳関門の能動輸送に関する知見が得られた。さらに、ストレス負荷の影響として、正常ラットと24時間の絶食で原始的な身体的ストレスを負荷した断食ラットを比較したところ、能動輸送に明らかな違いが見られることが明らかとなった。
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