本研究は、生物間の相互作用に基づく生物群としての機能、特に地球環境の保全に利用できる機能の安定保存を目的とする。本年度は、水棲生物群の生物間相互作用の基幹をなす微細総類を材料として、生物間の構造的な関連性を維持しながら生物群を保存することができる固定化乾燥法を用いて、凍結保存を試みた。さらに、陸上における植物と窒素固定菌との相互作用の場となる根の保存を可能にするために、西洋ワサビ毛状根をモデル材料として同様の検討を行った。 まず微細藻類の凍結保存については、ショ糖を添加剤として用いることによって、耐塩性真核微細藻類7株中6株、淡水性藍色細菌(ラン藻)7株中4株の保存に成功した。しかし淡水性真核微細藻類では、6株中1株しか凍結後の生存が確認できなかった。現在、この固定化乾燥法をシダ植物であるアカウキクサとラン藻の共生体に適応すべく、検討を行っている。 次に、西洋ワサビ毛状根の凍結保存については、ショ糖とグリセロールを添加剤として用いることによって毛状根を容易に再生でき人工種子の封入体としても有用なシュート原基で90%以上の生存率が得られた。また、毛状根の根端部でも同様の方法で60%の生存率を得ることができた。これらの結果から、固定化乾燥法は根の保存法として極めて有効な方法であることが示唆された。現在、上記の材料を用いて乾燥および凍結に対する耐性獲得機構に関する基礎的研究を行うとともに、この方法を根と窒素固定菌で構成される共生体へ適応すべく検討を行っている。
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