海に近い砂漠に雨を降らす方法を研究しているが、昨年度は海水の表面に黒い発泡スチロールの球を浮かべて、太陽光と自然風による蒸発量を小規模な実験で求めた。 今年度は、その蒸発した水分を、海上から砂漠へ移動させる方法のコンピュータ・シミュレーションを行った。砂漠の砂の表面をカーボンブラックで黒く塗り、そこに太陽光を当てると、地面の温度は上昇する。したがって、その上の空気の温度も上昇する。するとその部分が低気圧となる。すると海上の水蒸気は高気圧なので、地上の低気圧の部分に流れ込む。そのとき水蒸気は上昇気流に引き込まれて共に上昇する。上空で断熱膨脹し気温が低下し雲が発生し雨が降る、という原理である。 問題は海から内陸までどれくらいの距離まで水蒸気を引き込めるかである。というのは海岸近くで雨が降ったのでは、砂漠の奥地の灌漑のためにポンプで送らなければならない。これには大きな費用が掛かる。海岸沿いに山があって、山の斜面に雨を降らせることができれば、そこから斜めに重力で砂漠に灌漑が可能である。海岸沿いに山がない場合、海からどれくらい離れた山まで雨を降らすことができるかによって、この降雨方法の適用可能な立地条件が大きく異なる。今年度はシミュレーションのソフトウエアの選定と習熟に時間が掛かり、距離を算定するまでに至らなかった。来年度は引き続きシミュレーションを行い、実験も行う予定である。
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