本研究の目的は、生理的条件下でT細胞のシアリダーゼがB細胞に作用する可能性を考えた上で、T細胞膜のシアリダーゼの実態を明らかにすることである。 現在までに報告された細胞膜のシアリダーゼ(ラット肝細胞等)は至適pHが4.5-5と酸性に片寄っており、pH7では殆ど活性がない。そこで先ず、生理的条件下で働くシアリダーゼが免疫細胞に存在するか否かを明かにする事を平成7年度の目的として研究を行った。 マウス免疫組織より細胞膜リッチ画分を得、シアル酸をもつ糖脂質GM3を基質としてシアリダーゼ活性を測定すると、pH7ではpH4.5の約45-55%の活性が得られた。その活性は1mM Cuイオンにより阻害された。一方、pH4.5の活性は銅により約10-30%前後の阻害しかかからず両者は別の酵素であり、pH7近辺で働くシアリダーゼの存在が示された。現在両酵素の性質を更に検討している(論文作成準備中)。 また平成8年度の予定である活性化T細胞とシアリダーゼの関係も調べつつある。T細胞のblast化の状況は本年度の科学研究費で購入した倒立顕微鏡を用いて観察した。blast化に伴い酸性側のシアリダーゼ活性は上昇したが、生理的条件下で働くシアリダーゼが実際にT細胞表面膜上に存在するか否かはまだ明確な答えは得られず、平成8年度の課題である。
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