研究概要 |
イオンチャネル蛋白質の構造と機能の相関の解明のために、ポア構造を構成すると予想されるペプチドを設計・合成し、その構造と機能の研究を調べる研究は重要である。インフルエンザAウイルスのM2蛋白質は、1個の膜貫通領域を含む97個のアミノ酸からなる膜蛋白質で、水素イオンを含むカチオン選択性のイオンチャネルと考えられているが、きれいな単一チャネル電流の記録はまだ報告されていない。今回は、膜貫通セグメントである、22個のアミノ酸のペプチド(IFVM2)を合成して精製し、その構造や機能を調べた。 まずIFVM2ペプチドとジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)の再構成膜を作成し、膜中のペプチドの二次構造をFTIRで調べた。1655cm^<-1>のアミドIのピークがあらわれ、膜中で主にα-ヘリックスをとることがわかった。また、メタノールやTFEの中でもIFVM2も主にα-ヘリックスをとることがわかった。次に、IFVM2ペプチドとDOPCの再構成膜におけるH^+の透過性を蛍光色素ピラニンを用いて測定した。再構成膜のベシクルの内外でK^+の濃度差(内が濃度大)をつけ、バリノマイシンを膜に含ませることにより拡散電位を発生させたときのベシクル内部のpHをピラニンで測定したところ、IFVM2ペプチド存在下ではベシクル内の酸性化が観測され、ナイジェリシンとバリノマイシンの添加でそのpH勾配は消失した。従ってIFVM2ペプチドは水素イオンを透過する活性を持つと考えられる。以上の結果から、IFVM2ペプチドが膜中で自己会合し、そのヘリックスバンドルタンパク質の中央部分にポア部分を形成することにより、H^+チャネルを形成すると考えられる。 (1)Tanaka,T.& Yamazaki,M.,Biophys.Jpn.,36-S,33,1996
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