研究概要 |
我々が確立したニワトリ胚大脳神経解離培養系において、Mg^<2+>除去操作により長期増強(LTP)と同様な現象が起こることをすでに見いだしている。今年度は、Mg^<2+>除去前後の神経細胞から全RNAを調製して、Differential Display法を行ない、発現量の変動した遺伝子の単離を試みた。この方法は、P.Liangらによって1992年に最初に報告されたが、その後様々な改良が必要との報告があいつぎ、我々も種々の条件検討を行った結果、以下の点が最も重要であることを明らかにした。 1,逆転写反応での基質濃度を、原報よりも10倍高くし、反応効率を上げる。 2,PCR反応でのdNTP濃度は逆転写反応からのもちこみも含めて10uM以下にし、放射性同位元素の取り込み率を高める。 3,PCR反応でのprimerは、原報の10merよりも長鎖な20merを用い、再増幅効率を上げる。 この結果をもとに、50種のprimerセットを用いてDifferential Display法を行い、69種の差のある増幅産物を得た。そのうち再増幅が可能で、かつ鎖長が100bpを越える33種については、本当に発現量が変動しているかどうかを、Northern blottingにより解析した。その結果、個々の増幅産物に対応する特異的な転写産物は検出できたものの、その発現量にはいずれも差がなく、目的の遺伝子はまだ得られていない。これは上記1-3に加えて、 4,PCR反応は少なくも2回以上行い、再現性よく差の生じた産物のみを選択する。 ことの必要性を示しており、現在、この点を考慮して、さらに候補クローンを収集している。今後、得られた各クローンについて、Northern blotting、RT-PCR法により発現量の変化を確認した上で、その部分塩基配列を決定する。さらに、DNAデータベースにより配列の相同性解析を行ない、LTPに関連の予想される遺伝子および新規な遺伝子の候補を選択する予定である。
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