研究概要 |
1.GABA合成酵素であるマウスグルタミン酸脱炭酸酵素(mGAD-1,mGAD-2)のcDNAおよび遺伝子を単離し、構造を解析した。mGAD-1遺伝子は全長約56kbで翻訳領域は19個のエクソンにより構成されていた。その中に、2個の5非翻訳領域のエクソン(エクソンOA、エクソンOB)の存在を明らかにした。mGAD-2は50kb以上の遺伝子でエクソン1から7までエクソンノイントロン接合部位の塩基配列を決定し、その領域内の制限酵素地図を作成した。mGAD-2遺伝子についてはターゲッティングコンストラクト(プラスミド)を作成し、ES細胞に導入した。今後、相同組み換えが行った細胞を用いてノックアウトマウスを作成し、神経回路網におけるGAD遺伝子の役割を明らかにする。 2.GAD遺伝子の発現調節機構を解明するため、mGAD-1及びmGAD-2遺伝子についてプロモーターを含む上流領域を単離した。mGAD-1遺伝子については(1)エクソンOAとエクソンOBとで発現様式に組織特異性があること。(2)それぞれのプロモータに、Krox-24やSp1などの転写因子結合部位の存在。(3)プロモーター及び両エクソンを含む約10kbの上流域にlacZ遺伝子を連結した融合遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作成し、β-galactosidase染色を行った。その結果、大脳皮質や線条体などのmGAD-1遺伝子発現の多い領域に、lacZ遺伝子の発現が認められた。以上のことはプロモーター領域がmGAD-1遺伝子の発現に必要不可欠であることを示唆している。 mGAD-2遺伝子については、約8kbの上流域をlacZ遺伝子に連結した融合遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを4系統を樹立した。今後、これらのトランスジェニックマウスを解析することにより、GABA作働性線維に特異的な転写因子結合配列の同定を行う。
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