研究概要 |
1.サブスタンスPの引っ掻き行動惹起作用:サブスタンスPをICR系マウスの吻側背部に皮内注射すると、注射部位を後足で引っ掻く行動を用量依存的に惹起した。ヒトの種々の痒みがカプサイシンの処置で抑制されるが、サブスタンスPの作用も、カプサイシンの前処理で抑制された。また、ヒトにおけるサブスタンスPの起痒作用がコンパウンド48/80前処理で抑制されるとの報告があるが、サブスタンスPの引っ掻き行動惹起作用がコンパウンド48/80の前処理で抑制された。サブスタンスPの引っ掻き行動惹起作用が肥満細胞欠損マウスでも観察され、タキキニンNK1受容体遮断薬L-668,169で抑制された。これらの結果は、サブスタンスPの引っ掻き行動惹起作用に肥満細胞が必ずしも必須でなく、サブスタンスPの作用点の一つとしてサブスタンスPのNK1受容体が関与する可能性を示唆する。2.サブスタンスPの一次感覚神経に対する直接作用:ICR系マウスの培養一次感覚神経にサブスタンスPを投与すると、約30%の神経細胞で細胞内Caイオン濃度の増加が観測された。サブスタンスPのこの作用が、L-668,169の存在下では観察されなかった。また、RT-PCR法を用いて、ICR系マウスの後根神経節(一次感覚神経の細胞体が分布)にNKI受容体mRNAが発現している可能性を明らかにした。これらの結果から、一次感覚神経にNK1受容体が発現しており、サブスタンスPがNK1受容体に直接作用する可能性が考えられる。以上の結果から、(1)サブスタンスPの皮内注射により惹起されるマウスの引っ掻き行動が痒みに起因する行動である可能性、(2)サブスタンスPの引っ掻き行動惹起作用の作用点は、肥満細胞以外にも存在する可能性、及び(3)サブスタンスPが一次感覚神経に発現するNK1受容体に直接作用する可能性が考えられる。
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