飼育サルの環境エンリッチメント研究の初年度として、採食時間の延長と、有効な遊具の開発を試みた。 1.採食時間の延長について:個室ケージにおける試みとして、自己索餌装置の開発と、その動作記録をパソコンで行うためのプログラミング作成を行った。サル自身が操作して餌を出す装置の試作を行い、市販のコ-キングガンを改造してケージ上部にとりつけ、外筒の上半分をカットして餌を入れる開口部とし、引き金に長いハンドルを接着してケージ内のサルが動かせるようにした。この装置を使って餌を取れる個体もいたが(主として若いサル)、ハンドルの動作方向が一定のため、横あるいは斜め方向に動かそうとして失敗するサルも多く、動作方向を持たずに確実に餌を押し出す構造が必要だと言うことが分かった。このため、360度可動スティックスイッチを採用し、精密電動モーターとリレーによって軸を押し出す装置を作成した。スティックの接点から取り出した信号をパソコンに取り込んで、動作状況を記録した。 放飼場の群においては、干し草を敷いた中に固形飼料を撒き、サルが手でかき分けないと餌を探せない給餌法を試みたところ、採食時間が有意に延長された。 2.遊具の開発について:放飼場での遊具として、直径が1、8mの回転輪を試作し、軸の回転数を近接スイッチで検出してパソコンで記録した。この記録から、サルが夜明けから日没まで回転輪に乗って良く利用し、群飼育時の遊具として有効な手段であることが明らかとなった。但し、この種類の遊具を利用するのは、主として5〜6歳以下の若齢個体であり、成熟個体は運動する遊具に対し、警戒的であることも分かった。(一般C:萌芽的研究)
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